検索 メニュー MENU

× 閉じる

「中国での食品安全への取り組みについて」 講座①『輸入食品の安全性』

佐藤顧問 写真2 ハルピン市

アジア食品安全研究センター 佐藤元昭顧問に「中国での食品安全への取り組み」についてご寄稿いただきました。3回に分けてご説明いただきます。

講座①は「輸入食品の安全性」

講座②は「食品安全への動き」

講座③は「法規制や残留農薬検査体制」

の内容になりますので、ご期待ください。

 

講座①「輸入食品の安全性」

はじめに

 あれほどマスコミを賑わせていた、中国食品の「問題性」を煽る報道も幸いなことに最近はほとんど鳴りを潜めている。これは、中国の食品安全性確保体制が整い、この種の事件が減ったことや、マスコミや大衆がこの種の報道に飽きてしまったためであろうと思われる。また、大衆受けする他の話題が新たに現れたためかとも思われる。

 「寝た子を覚ます」ようで恐縮だが、ここでは中国食品を取り巻く状況について残留農薬を中心に改めて見なおしてみたい。

 

日本の食料事情

 日本の食料自給率はここ20~30年来40%以下(カロリーベース)を維持し続けており、政府が笛を吹き太鼓を叩いても一向に改善せず、むしろ低下傾向にさえある。また、飼料を含む穀物の自給率は28~29%と、さらに悲惨な状況であり、国連加盟175ヶ国(地域)のうち125番目で、OECD加盟34ヶ国の中で29番目である。

 自国のみでは十分な食料調達ができないのであるから、米以外の大部分の食料は海外からの輸入に頼っている。小麦やトウモロコシ等の穀物類、馬鈴薯、玉葱等の貯蔵の利く根菜類、一部の冷凍野菜等は、費用と時間をかけて遠方から輸入することができるが、比較的単価の安い生鮮作物や安価な労働力を利用した加工食品等は、中国などの近隣諸国からの輸入に頼らざるを得ないのが現状であろう。

 農業人口の減少と高齢化により農業生産が衰退する中で、食生活が多様化し米離れが進み、パンやパスタの需要が増え続けている。

わが国には「世界中の旨い食べ物が揃っている」と言われるほど多種多様な食品が巷にあふれている。この結果、輸入食品の種類も量も年々大幅に増え続けている。

佐藤顧問 写真1 トウモロコシ畑

 写真:瀋陽市郊外のトウモロコシ畑

 

食品をめぐる日・中関係

 北京で開催された「日中残留農薬分析交流会シンポジウム」での中国輸出食品安全局局長湯氏の講演によると、日・中食品貿易額は約3千億ドル(2010年)で、その額も年々増加していて、中国は日本の輸出相手国第1位、日本は中国の輸出相手国第3との事である。

 しかし近年では、中国食品の輸出相手国は米国、香港、韓国、マレーシアなどが大幅に伸びている一方で、日本向け食品の輸出量の伸び率は次第に低下している。例えば、2005年頃は輸出量の約30%が日本向けであったものが、2010年頃には約20%に、2015年には15%近くにまで落ち込んでいる。

 この事は中国が、「安全性の評価が厳しい上に感情的かと思えるほど中国食品に厳しい目を向ける」日本よりも、もっと売りやすい国や地域に売り先を変えていることがうかがえる。

 中国の人口は約14億人と言われており、地球人口の5人に一人が中国人である。この人達の生活水準が向上し、「空腹を満たすための食事」から抜け出し、より栄養価が高く、美味しいものを要求するようになるに従って、中国国内での食料消費量は飛躍的に増加している。

 また、収入の増加とより良い生活を求めて農村人口の都市部への流出により食料生産が停滞し農産物の輸出余力が減衰し、世界中から食料を調達する『食料消費国』にと変化しつつある。そして、1995年に米国人のレスターブラウンがこの事を予言した論文「誰が中国人を養うのか?」が現実のものとなって来ている。  

佐藤顧問 表1日中農業規模比較表

出典:農林水産省海外農業情報(2005年8月)を基に筆者作成

 

輸入食品の安全性

 従来日本人は「舶来品」崇拝的であったが、食品については「国産品」に重きを置いているようである。中でも昨近の中国産食品の各種汚染問題の報道などから中国産食品に対する『恐怖・忌避』的な傾向があるように見受けられる。本当に中国産食品は『危険』なのであろうか?

 厚生労働省の輸入食品監視統計によると、平成28年度は中国から約74万3千件、380万トン近くが輸入されている。そして抜き取り検査の結果、違反件数は中国食品が181件、2番目が米国で98件、3番目がベトナムで70件となっている。

 この事から『中国食品の違反が最も多い』と報道され、多くの人達には『やはり中国産食品は危険』と受け止められてしまっている。しかし、中国食品は輸入件数が非常に多く、検査の割合も他国より多いため、結果として中国産食品の違反件数が多くなってしまう。ところが、検査に対する違反率は、年によって若干の変動はあるものの、平成28年度は、オーストラリア1.08%、が米国0.44%、次いでタイ0.42%、ベトナム0.39%であり、中国は0.25%と、他の国の違反率に比べても中国は相当低い数値である。

 中国からは輸入件数が非常に多い上に検査率も高く、検査数が約7万3千件であり、米国からの輸入食品の検査数は2万2千件であり、中国の違反件数は必然的に多くなってしまうが、違反比率は米国より低くなっている。これは中国が輸出に力を入れており、国内消費農産物より輸出品の品質の確保に力を入れている証でもある。

 

国別検査結果と違反率

講座②は「食品安全への動き」こちら

講座③は「法規制や残留農薬検査体制」こちら

(執筆:アジア食品安全研究センター 顧問 佐藤元昭)

[2017年10月27日改定]

 

 

2017.12.08 更新