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カビ相談センター高鳥浩介先生の「食品とカビ雑学」講座③『カビの発育と形態』

新連載を開始します!

NPO法人カビ相談センターの高鳥浩介先生に「食品とカビ雑学」についてご寄稿頂きました。

第3回目は「カビの発育と形態」です。

 

講座第3回「カビの発育と形態」

1)カビの発育による集落や形態

微生物は、発育することにより、集落と顕微鏡による形態を特徴として大きくなっていきます。
食品としての微生物に細菌、酵母、カビを例にしてどのように目でみえるようになるか見ていきます(図1)。

高鳥先生 講座③ 図1

 

細菌と酵母は同じような発育像を示します。つまり単細胞の細菌と酵母は、増殖によって形を作ります。その姿はものの上で団子を重ねたようなイメージです。ところがカビは違います。しっかり糸を伸ばしながら速いスピードで横へ横へと広がりずいぶんと大きく発育していきます。さらにカビは色を出して進んでいきます。

それでは顕微鏡の小さな世界から眺めてみましょう。ここではポンチ絵で細菌、酵母、カビの生えていく姿をまとめています(図2)。

 

高鳥先生 講座③ 図2

 

細菌は、きれいな形で分裂しながら増殖していきます。また酵母は一個の大きな細胞からあちこちとコブを作りながら増殖します。一方、カビは、胞子から糸を伸ばし、それが横へ横へと広がっていき、やがてその糸(菌糸といいます)が成熟するとその一部に胞子を作りはじめます。この姿はカビによって異なり、早い時期の胞子を作る場合と菌糸を伸ばしてから胞子を作る姿など多様です。

さて、ここからはカビの生える姿を紹介します。まずカビが生えることで誤解されているケースがありますので図3の説明をします。

高鳥先生 講座③ 図3

 

カビが生えることを正しく知ってほしいことがあります。それはカビが生えるのは空中ではありません。必ずものの上で生えることです。皆さんの中には当たり前と思っている方がいるでしょうが、けっこう誤解されて「空中で生えるからカビ臭い」などともっともらしく話している方がいます。さてカビが生えるといいましたが、図3のようにものの中で糸を出しながら拡がっていきます。

その姿を図4でみてください。これは食品で最も事故の多いクロカビが胞子からどのように広がっていくか顕微鏡で追っている写真です。

 

高鳥先生 講座③ 図4

 

培地を用いて時間経過でみてみましょう。まず胞子が大きく変化し始め、赤ちゃんのような糸を出します(ここでは10時間目ころ)。植物の種が芽を出す時期と同じです。これを専門用語では発芽といいます。発芽し始めた後は菌糸となってあちこちと広がっていきます。24時間経過するころにはすでに菌糸で込み合ってきます。

さらに私たちの目でカビの生える姿を観察してみます。身近な例として空中に飛んでいるカビはどれくらいいるか調べてみることにします。図5ではカビの生えやすい培地を用いて10分間開けっ放しにしてみました。その後培地の蓋をして空中にカビがどれくらいいるか調べてみると、翌日(1日後)ではまだ見えません。さらに2日後でもはっきりしません。そして3日後にうっすらと白い綿状のものが見え始めました。

この綿状のものがカビです。その後4日、5日と進むほどに色がはっきりして大きさが次第と変化していきます。このカビの生えた塊りを集落といいます。集落は、だいたい1週間すると成熟した姿になりここで空中のカビはいくつと判定します。おおよそ50くらいのカビがいると判定します。

 

高鳥先生 講座③ 図5

 

観察を繰り返していきますと、カビが大きさや色だけでなくいろいろな形で生えていくことが分かります。それがカビ退治にもっとも厄介な生物としての姿です。
カビは「厄介な生物」といいました。なぜでしょうか、考えてみてください。まず、生えた姿をみると綿状、ビロード状、粉状一定の日数を要して目視できるようになると図1のように基本的には綿状、粉状、ビロード状の3パターンをとります。

綿状のカビは、一般に発育が速くふさふさした状態で生え、色として黒系か白系が多いです。そして胞子の産生が少ない傾向にあります。培地内への侵入も弱いといえます。
粉状のカビは、発育がゆっくりしており、その分菌糸上での胞子産生は、強い傾向があります。胞子産生が多いことは、カビにとって子孫を残しやすくまた汚染も強いです。培地内への侵入はやや強くなり、しっかりものの中で根を張っていることになります。

ビロード状のカビは、表面をみても緻密な構造で、膜状に生えます。そのためものの中での生え方も強く、汚染した場合被害が大きくなりがちです。さらに汚染した部分の修復に時間や労力もかかり、カビ対策上もっとも厄介なカビです。

さて、ここまでカビの生え方をみてきましたがそのもとにある胞子は一体どのような形と大きさをしているかみていきます。

カビ胞子の形は、球形、楕円形、紡錘形、三日月形などさまざまですが、菌種ごとである程度一定の大きさ・形・構造の胞子が形成されるために分類上重要な指標になっています(表1、図6)。大きさは、小さい場合3~4ミクロン、大きい場合は、100ミクロン以上になります。

 

高鳥先生 講座③ 図6

 

カビの名称 大きさ
コウジカビ 球形、亜球形 4~6ミクロン
ススカビ 紡錘形 長径 30~70ミクロン
クロカビ 楕円形、球形 3~8ミクロン
エピコッカム 俵形 20~40ミクロン
フザリウム 三日月形 長径 20~100ミクロン
クモノスカビ 亜球形 5~10ミクロン
アオカビ 球形、亜球形 3~6ミクロン
ツチアオカビ 球形 3~5ミクロン

 

参考資料 : カビの胞子の形(図7)

高鳥先生 講座③ 図7

 

食品とカビ雑学講座① 「カビって何だろう?」はこちら

食品とカビ雑学講座② 「カビの俗名」はこちら

 

<執筆者>
高鳥 浩介(たかとり こうすけ)
NPO法人カビ相談センター 理事長

(ホームページ:http://www.kabisoudan.com/)

 

略歴
昭和47年 東京農工大学大学院獣医学専攻修了
平成14年 国立医薬品食品衛生研究所  衛生微生物部長
平成19年 東京農業大学 農学部 客員教授
平成19年 帯広畜産大学地域共同研究センター 産学官連携教授
平成19年 日本獣医生命科学大学 獣医学部 客員教授
東京大学 農学生命科学研究科  非常勤講師
平成20年 NPO法人カビ相談センター 理事長

審議会・委員会
食品安全委員会 委員(自然毒・カビ毒専門調査会 副座長)
日米有毒微生物専門部会(UJNR)
(独)国際協力機構 大エジプト博物館保存修復センタープロジェクト
東京都産業技術研究センター エンジニアリングテクノロジー

著書
「カビのはなし」朝倉書店 2013年
「目で見る真菌と真菌症」医薬ジャーナル 2014年
「食品・環境の衛生検査」朝倉書店 2014年
「カビ苦情・被害管理マニュアル」NPO法人カビ相談センター1~4巻 2015年

2018.01.30 更新